地下鉄東西線の京都市役所前駅から徒歩9分。
京都の街が持つ静かな気配を感じながら、夷川通を歩いていくと、喧騒から少し距離を置いた場所に、一軒の鮨店が佇んでいます。
それが、寿斗 ふかがわです。
店内は、12席のカウンターを中心とした落ち着きのある空間。目の前の一貫に集中できる静寂と凛とした緊張感が漂っています。
この店の魅力は、いわゆる江戸前寿司という枠だけでは語り切れません。伝統を大切にしながらも、そこに独自の感性と進化を重ねていく。寿斗 ふかがわには、そんな“京都の鮨”としての静かな個性があります。
今回いただいたのは、昼のおまかせコース 9,500円(税込)です。
案内されている内容は、かつお出汁で炊いたシャリと、新鮮で上質な魚介を使った握りを楽しめるランチコース。
ここで注目したいのは、昼に9,500円という価格の意味です。
京都で本格的な鮨をいただくとなると、夜は一気に特別な価格帯へと入っていきます。その中で、昼のおまかせ9,500円という設定は、職人の技、上質な魚介、そしてカウンターで味わう緊張感を、比較的現実的なラインで体験できる入口でもあります。
それは単なるランチではありません。
昼の時間に、鮨という料理の奥行きに触れるための、ひとつの上質な体験なのです。
今回は、お口直しのガリを含む全13品の中から、特に印象に残った感動の3品をご紹介します。
まず一品目は、鯛の自家製千枚漬け乗せです。

明石の鯛に、自家製の千枚漬けと数種類のお漬物を合わせた一貫。鯛の上品な旨みを、千枚漬けのさっぱりとした酸味と食感が静かに引き立てます。
ただ魚の美味しさを味わうだけではありません。
そこに京都らしい漬物のニュアンスが重なることで、ひと口の中に土地の記憶が立ち上がってくるような感覚があります。淡白でありながら、決して単調ではない。清らかで、余韻のある一品です。
二品目は、海鰻です。

皮目はパリッと香ばしく焼き上げられ、噛んだ瞬間に濃厚な脂の旨みが広がります。この脂が、実に力強いのです。
それでいて、ただ重いわけではありません。香ばしさと脂の甘みが重なり、皿に残った脂までも、思わず残さず味わいたくなるような存在感があります。
鮨の一品でありながら、焼き物としての完成度も感じさせる、記憶に残る一皿でした。
そして三品目は、穴子です。

これは、まさに衝撃でした。
口に入れた瞬間、ふわりとほどけ、そのまま消えていくような柔らかさ。噛みしめるというより、舌の上でほどけていく感覚です
穴子という素材の魅力を、ここまで繊細に、そして儚く表現できるのかと驚かされます。甘み、香り、温度、食感。そのすべてが一瞬のうちに重なり、そして静かに消えていく。
まさに、記憶に残る一貫です。
鮨という料理は、完成された一皿をただ受け取る料理ではありません。
目の前で握られ、置かれ、すぐに口へ運ぶ。その短い時間の中に、魚の香り、シャリのほどけ方、温度、酢の輪郭、職人の所作が重なります。
つまり鮨とは、目の前で完成していく“瞬間の料理”なのです。
寿斗 ふかがわの昼のおまかせコースは、そのライブ感を昼の京都で目の前で味わえる、非常に贅沢な時間でした。
大切な人との食事にも、自分へのご褒美にも合う一軒です。
京都らしい静けさの中で、鮨の奥行きをゆっくりと確かめる。そんな昼の過ごし方をしたい方にとって、寿斗 ふかがわの昼のおまかせコースは、非常に魅力的な選択肢になると思います。
京都の昼に、静かに贅沢を味わうなら、一度訪れてみる価値のある一軒です。







































