草津駅を近鉄百貨店側に出て、人の流れを横目に北へ徒歩7分。
ふと視界がひらけると、真新しいテナントビルがスタイリッシュに並ぶ一角が現れます。
その階段をそっと上がった2・3階。街の喧騒から少しだけ切り離された場所に、ひっそりと灯りをともす隠れ家「ロンロガレージ」があります。
ここは、自家製加工肉──シャルキュトリーを武器に、肉好きとワイン好きの心をわし掴みにしてきたお店です。
以前アラカルトで訪れた際、あまりに衝撃的で、「これはコースでもう一度向き合いたい」と強く思わされました。今回は、その“答え合わせ”のような気持ちで、念願のランチコースに挑みます。
ところが......。
公式インスタグラムには、店主の独立による「閉店予告」というまさかの一文が。
今の「ロンロガレージ」を味わえるのは、2025年12月末までというタイムリミットが刻まれていました。
寂しさと同時に、来年には同じ草津駅最寄りでカジュアルフレンチとして再出発されるという、前向きな宣言も伺えました。
“この味とは、必ずどこかでまた再会できる”──そう思うと、今回のランチは「別れ」と「再会」のプロローグが同居する、特別な時間になりました。
予約は電話、もしくは公式インスタグラムのDMから。特にランチは1人営業されているので、予約が必要です。
昼下がりから堂々とワインを楽しめるランチコースが用意されているのも、大人のご褒美時間としては嬉しいところです。
今回は、デザートとパンを含め全7品の「シェフのおまかせコース税込4,950円」の中から、特に「心を鷲掴みにされた3品」をご紹介します。
1.自家製加工肉盛合せ
──一皿の上で、五つの物語が同時に始まる

この店の真骨頂ともいえる自家製加工肉の盛合せです。
5種それぞれがまるでキャラクターの異なる登場人物のようで、一口ごとにシーンが切り替わっていきます。
そのまま味わうと、素材の力と技術の精度がダイレクトに伝わり、カラシを添えると香りと輪郭が一段と立ち上がる。
そこにワインを重ねると、モノクロだった世界が一気にフルカラーへと変わっていくような感覚になります。
特に印象に残ったのがパテ。
しっかりとした肉の密度感と、口に入れた瞬間にほどけていくような口溶けのコントラストが見事で、「これが自家製の本気なのか」と思わず唸ってしまいました。
その存在感はすでにメイン級です。
2.椎葉牛モモ肉のステーキ バジルマッシュルーム添え
──ブランドではなく、哲学で選ぶ一枚

肉料理の主役として登場したのは、あえて近江牛ではなく「椎葉牛」のモモ肉。
店主いわく、「有名だからではなく、自分が本当に“美味しい”と思う肉を出したい」とのこと。
その言葉どおり、皿の上にはブランド名に頼らない“意思ある一枚”が横たわっていました。
分厚く切り出されたステーキは、フォークを入れた瞬間に火入れの良さが伝わってきます。
中心までじんわりと熱が通っていながら、繊維はほろりとほどける。
噛み締めるたびに旨みがじわっと広がり、脂で押してくるのではなく、「赤身の力」で勝負している印象です。
脂身は控えめでありながら、満足感はしっかり。
食後に重さが残らず、むしろもう一口を欲してしまう──そんな“理性的な贅沢”を感じるステーキでした。
3.モンサンミッシェル産ムール貝のワイン蒸し
──一杯のスープが、旅の記憶を呼び覚ます

フランス・モンサンミッシェル産の小ぶりなムール貝を、パセリと白ワインだけで蒸し上げた一皿。
余計なものをそぎ落としたレシピだからこそ、素材に対する信頼と自信が伝わってきます。
口に含むと、サイズ以上の旨みが押し寄せてきます。
ミネラル感と貝の出汁が凝縮されたスープは、最初はやや塩味が強く感じられましたが、水をふたさじ加えると一気に味の輪郭が整い、そこからはもう止まりません。
気がつけば、スープは一滴残らず飲み干していました。
まるで、旅先のビストロで“偶然出会った一杯”のような、記憶に残るワイン蒸しです。
お肉とワインが好きなら、「今」のうちに
お肉とワインが好きな方であれば、「ロンロガレージ」は一度は訪れてみていただきたいお店です。
特にシャルキュトリーは、見た目こそシンプルで派手さはありませんが、一口かじるたびに「地味さ」と「凄み」が反転します。
その奥行きのある旨みに、自分の味覚が試されているような感覚さえ覚えます。
こちらのお店で出会ったスペイン産ワイン、
「オクステ ザ サイレンス レッド ブレンド」とのペアリングは、個人的に忘れがたい体験でした。
グラスを傾けるたびに、シャルキュトリーの表情が変わり、ワイン側のニュアンスもまた少しずつ姿を変えていく──まさに“対話するペアリング”です。
この品揃え、このクオリティ、この世界観でシャルキュトリー盛合せを提供できるのは、「ロンロガレージ」だけだと店主は語ります。
2025年12月末までという限られた時間の中で、この“物語のワンシーン”に立ち会えるかどうかは、私たち次第です。
ワインと肉をこよなく愛する方へ。
ぜひ一度、階段を上がって、この隠れ家の扉を開けてみてください。
きっと、グラスと一皿の向こう側に、小さな感動と忘れがたい余韻が待っています。










































