あの日を境に、私の頭の中に霧がかかるようになりました。
言葉が出てこない。数字が入ってこない。
いつもなら手元に残るはずの記憶が、砂のようにこぼれ落ちていく。
医師に言われた言葉は、
「ブレインフォグ。コロナ後遺症の一つです」。
そして風邪を引くたびに繰り返す。
…終わった、と思いました。
思考が鈍り、記憶が散る。
まるで、自分という人間が、静かに崩れていく感覚でした。
私には、守るべき家族がいる。まだ、やりたいことが、山ほどあります。
だからこそ、決めた。
学びを、やめない。
たとえ、一歩進んで二歩戻るような毎日でも。
リスタートは、小さな資格から始まりました。
もともと私は、地道に勉強するのが苦手な人間です。
高校卒。現場たたき上げ。試験はいつも一夜漬け。
だから「宅建」には何度も挑戦して、何度も落ちました。
でも今は、それでいいと思っています。
勝てる場所で、勝負をする。
それが現実的な戦略なのです。
資格は、“実務と信頼”を手にする武器になります。
賃貸住宅メンテナンス主任者
→ 学び続ける姿勢を、社内に示すために。
第二種電気工事士、消防設備士
→ 「手に職を持つ」ことが、未来の保険になる。
かつて憧れていた資格は、今は見送りました。
多くの文字を読むだけで頭が痛み、めまいがする。
でも、それは“敗北”ではない。
「資格」とは、知識よりも、意思を証明するものです。
大切なのは、合格ではない。
学ぶ姿勢そのものが、信頼を生み、人生の土台になります。
忘れることに怯えながら、目の前の問題に一つひとつ向き合う。
この不自由な身体で、今日もテキストを開く。
それは、かつての私にはなかった、強さと誠実さの証明なのかもしれません。
