それは、静かに始まった“試練”でした。
妻に内緒で始めたチョコザップ通い。しかし、そこにはどうしても避けられない“距離”という名の壁がありました。
最寄り駅周辺には店舗がありません。
競合ジムが多いからか、それとも適したテナントが見つからないのか、結局、片道5.1km先の店舗まで足を運ばねばなりませんでした。
田舎町の5キロは、都会のそれとは違います。
電車では非効率、自家用車は妻の通勤専用。
当然、2台目の車を持つ余裕など、家計にはありません。
そこで選んだのは、自転車という原点回帰の選択でした。
ブレインフォグを発症し、体調への不安を抱える中、ある日、ふと実家の母に打ち明けました。
「最近、優待を使ってジム通いを始めたんやけど、ちょっと遠くて」と。
その数日後。
思いもよらぬ“贈り物”が、私のもとに届きました。
ブリヂストン フロンティアDX
定価169,000円
前輪モーターの電動アシストと、回生充電機能を備えた、フルスペックの“ママチャリ”。
向かい風も、登り坂も、もう怖くない。
何より、そこに込められていたのは“機能”ではなく、母の思いでした。
「父さんには内緒やで」
そう言って、年金の一部を使ってくれた母。
この歳になって、親に何かを買ってもらうことの照れ臭さとともに、私は、自分がいつまでも“子供”であることを思い出しました。
そしてその瞬間、ペダルを漕ぐ脚に、またひとつ、力が宿るのでした。
