未来家計譚

高卒 ✕ 地方会社員でもできたリアル家計管理術

季節は静かに熟す。名店「行楽庵」で凛の時間

打ち水で潤んだ石畳を踏みしめ、静謐な玄関をくぐる瞬間、景色は音を失います。滋賀でも稀少な食べログBronzeの名店「行楽庵」。胸の鼓動をひとつ整え、ランチコース7,000円に身を委ねました。

予約は電話のみです。定休は火曜日。女将さんによれば、水曜日は市場が休みのため食材の構成が変わることがあるそうです。お支払いは現金のみで、クレジットカードなどのキャッシュレス決済は対応していませんのでご注意ください。

窓辺に整然と並ぶ3卓のテーブル。奥には座敷も控え、秋晴れの光がやわらかく器の縁をなでていきます。客席は私たちと、もう一組の女性お二人。供されるタイミングまで呼吸を合わせたかのように、空間全体が一つの所作として完結していきます。
この日のコースはデザートを含め全十品。過剰な演出はなく、丁寧という言葉の本質だけが静かに積み重なっていきました。

 

三皿、心に刻まれた余韻

 

鴨と冬瓜の炊き合わせ


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端正な出汁が冬瓜の芯まで染み渡り、鴨は噛むほどに旨みの輪郭を深めます。過不足のない温度、力みのない余白。静けさの中で味わいが澄み、心まで清められるように感じました。

 

鮎の塩焼き


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骨までやわらかく、頭からがぶりといけます。子持ちの旨みがふっと広がり、旬の終わりが持つわずかな翳りまで、確かな滋味として舌に残ります。季節の句読点を、火入れと塩だけで描き切る一皿です。

 

とろろご飯と漬物


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香り高いとろろの流れに、自家製と思われる漬物が小気味よい拍子を刻みます。とりわけ奈良漬けは記憶を更新する一本。甘みと発酵の香りが美しく立ち上がり、食後の余韻を上質に締めくくってくれます。

 

学びという余白──盃を置いて味に向き合うということ

私は普段、料理と酒のペアリングまで含めて食体験を完結させます。この日はあえて盃を置き、BGMと張りつめた空気の中で、料理そのものの声に耳を澄ませました。酔いに頼らず味を最後まで受け止め切る難しさと、まだ私に残る経験の浅さを静かに知る時間となりました。
それでも、十皿は一皿ずつ誠実で、温かみがあり、食後は腹八分の軽やかさが体に心地よく残ります。「良いものを、ちょうど良く」。その感覚が翌日のコンディションまで整えてくれるように感じました。

季節は音を立てずに移ろいます。器に落ちる光と出汁の余韻、その静かな高揚を、次は人生の成熟とともに味わいたいと思います。


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