未来家計譚

高卒 ✕ 地方会社員でもできたリアル家計管理術

金融リテラシーは、生きる力だ──人生を設計する大人の教養⑥

あなたのお金を守る力──“知らなかった”では済まされない金融トラブルの現実

それは、ある日突然、SNSのDMから始まりました。
「絶対に儲かる投資がある」「月利10%保証」「紹介すれば報酬がもらえる」。
少しだけ……ほんの少しだけ、興味を持った。──でも、そこが落とし穴でした。

いま私たちが生きる世界には、“巧妙にデザインされた罠”が、日常の顔をして潜んでいます。
大切なのは、「見破る目」と「逃げる決断力」。
今日は“資産を築く”話ではなく、“資産を守る”ための話です。


◆ 「儲かる話」に飛びついた人が最後に失うもの

「誰でも稼げる」「今すぐ始めよう」「SNSだけで月100万円」。
それは、人間の“願望”に突き刺さる言葉です。詐欺師は、希望と不安のスキマに入り込み、焦りをレバレッジにします。狙われるのは、知識がない人よりも、追い詰められている人。だからこそ、覚えておいてください。

「必ずもうかる投資」は存在しません。
商品内容・リスク・リターンを理解しないまま購入してはいけません。

“絶対に儲かる”という言葉には、「絶対に近づくな」という警報が内蔵されています。


◆ SNS時代の“新しい詐欺”に注意せよ

電話や迷惑メールだけが手口ではありません。Instagram、X(旧Twitter)、LINE──私たちの「日常」の中に侵入してきます。

  • 個人間融資を装うヤミ金

  • 「給与ファクタリング」など、手軽さを餌にした違法スキーム

  • バイナリーオプションやFX“必勝”ツール販売

  • 「先輩が稼いでいる」と称するマルチ商法の勧誘

たとえ“手軽”でも、SNS経由の個人間融資や給与ファクタリングは利用してはいけません。登録を受けた正規の業者かどうか、金融庁の「登録貸金業者情報検索」で必ず確認してください。

さらに、事業者が不当な勧誘を行った契約は「取り消し」うる場合があります。たとえば、損をする可能性のある金融商品を「将来確実に値上がりする」と断定したり、重要事項の不利益情報を告げなかったり──こうした手法は消費者契約法で取消対象になり得ます(原則は締結から5年以内・被害に気づいてから1年以内。霊感商法等は10年・3年)。

◆ 契約は“サインした瞬間”から現実になる

契約は、あなたの合意で法的な権利・義務が発生する行為です。
契約書は、成立と内容の証拠を残すためのもの。内容を読まずに署名する──それは、暗闇で見えない相手に全権委任状を渡すような行為です。疑問点は必ず質問し、わからないままのサインはしない。

不動産賃貸などでは、契約前に「重要事項説明」を受けます。更新条件、禁止事項、初期費用──疑問はその場で解消しましょう。これは、納得して契約させるための説明であり、あなたの「守る権利」です。

◆ 金融リテラシーは、あなたの「盾」になる

守る力とは、具体的な行動習慣です。

  1. 誘われたら一晩おく。 衝動の熱は、時間で冷めます。

  2. 徹底的に調べる。 事業者の登録・評判・商品リスクを一次情報で確認する。

  3. 一人で抱えない。 迷ったら、即相談。

    • 金融庁「詐欺的投資の相談ダイヤル」0570-050-588

    • 金融庁「金融サービス利用者相談室」0570-016-811

    • 日本証券業協会「FINMAC(フィンマック)」0120-64-5005

    • 消費者ホットライン「188(いやや)」
      いずれも公式の相談窓口です。信用は資産。 クレジットの遅延は、将来のローン審査に響きます。個人信用情報はJICC・CIC・全国銀行個人信用情報センターの3機関が相互交流。信用の4C(Character/Capacity/Capital/Control)──約束、返済能力、資産、自己管理──を日々磨く。

◆ 「人を信じる」ことと「仕組みを疑う」ことを両立せよ

人を疑う必要はありません。疑うべきは仕組みです。
「信頼するのは人、疑うのは仕組み」──この視点を持てるかどうかが、守りと損失の分かれ道になります。

たとえば、「家族や先輩の紹介だから安心」ではなく、契約条項・リスク・費用構造をチェックする。キャンセル・クーリングオフ・中途解約──出口条件を先に確認する。

◆ “守る力”は、最後に問われるリテラシー

「稼ぐ」「貯める」「増やす」。この三拍子が揃っても、守れなければゼロになります。
情報に振り回されず、選択できる自分を育てること。
お金に関する“最も賢い決断”は、時に「断ること」です。
それができる人こそ、真にお金を支配しています。


いますぐできるチェックリスト(保存版)

  • DMの“儲け話”は即スクショ→放置。返信しない。

  • 事業者の登録・商品リスク・手数料は一次情報で確認

  • 契約前に重要事項説明で不明点を潰す。説明が曖昧なら契約しない。

  • 困ったら188/FINMAC/金融庁に即相談。番号をスマホに登録。

  • クレジット遅延は信用の敵。日々の支払い管理を最優先。

最終回は「まとめ編」──家計・人生・投資・保険・借入・防御。
金融リテラシーを“生きる知性”としてどう使うか、総括します。

 


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