滋賀県甲賀市水口町。
自社営業店舗でのミーティングを終え、ほっと肩の力を抜いた昼時。私が足を運んだのは、かつて訪れたことのある町中華──湖南飯店。選んだのは、迷うことなく「麻婆豆腐定食」税込1,300円。
店内は中華風の調度とBGMに包まれ、若いスタッフがテキパキと立ち働く姿が印象的。私はひとりでの訪問だったため、円卓を仕切られた席に案内されました。隣に座った女性客には「麻婆豆腐は辛いですが大丈夫ですか?」とさりげなく声をかけるスタッフの姿もあり、その心遣いに店の気質を感じます。
やがて──
土鍋の中でグツグツと音を立てながら現れた麻婆豆腐は、熱気と香辛料の香りをまとい、まるで戦いを挑むかのように迫ってくる。エプロン必須の迫力ある一皿です。
レンゲを入れれば、肉厚なひき肉がたっぷりと散りばめられ、白飯の山と絶妙に絡み合う。ニンニクの芽の爽快な歯ごたえがリズムを刻み、舌に残る痺れが次の一口を誘う。辛さの奥に潜む旨味──そのギリギリの境界線が、人を虜にします。
「これぞ、麻婆豆腐の醍醐味だ」
私は汗をにじませながらも、レンゲを止めることができませんでした。
ただ、周囲を見渡すと客の大半は「冷やし担々麺」を注文しています。次の来店理由が決まった瞬間でした。
湖南飯店──私にとって、また一つ“戻るべき場所”が増えたました。

